下血のはなし 各論 大腸憩室出血
本日は下血をする疾患で、「大腸憩室出血」の話です。
そもそも大腸憩室とはなにかご存じでしょうか。あまり聞いたことがないと思います。
大腸憩室とは、大腸の壁の弱い部分が、腸から外側に袋状に飛び出した部分のことを言います。
(オリンパス おなかの健康ドットコムより)
この大腸憩室から出血することを「大腸憩室出血」といいます。
憩室出血の特徴として、痛みも何もないのに突然大量の下血がでることがあげられます。
なにかおなかがグルグルするなあ、と思ってトイレに行くと血液がドバっと出ておどろく、という事が多いです。
たくさん出血すると赤っぽい血の塊(凝血塊)がでてきますし、量が少なめで腸の中にしばらくとどまっていたら暗赤色の便が出てきます。
治療は出血点を同定して止血することですが、これがなかなか難しいです。
以前にも触れましたが、下血は基本的には安静にしていれば自然にとまることが多いです。
大腸憩室は多発することが多いので、血が止まってしまっては出血点を見極めるのが難しくなります。
多くの場合、出血して病院にきて、検査をしている間に止まってしまいます。
出血点は大腸憩室の中にあるので、今まさに出血をしている時でなければ、それを見つけ出すのは困難になります。
CTで出血しているのが確認でき、今まさに出血しているぜ!緊急内視鏡だ!
という場合も、大腸の中は便と血でいっぱいです。
非常に難易度の高い内視鏡になるし、時間が長くなるので患者さんもしんどいことが多いです。
視界も悪いので、結局出血点はわからなかった、という事が多いです
この憩室出血ですが、非常に悩ましい疾患です。ここからは僕の経験の話も含みます。
憩室出血は、一旦自然止血したとしても、再出血することがよくあります。
しかもそれは夜中に多い気がします。
勤務医時代は、憩室出血の方が入院されると、いつもなんとも言えない焦燥感にさいなまれていました。
「夜中に出血して呼ばれたらどうしよう」
心配は大体的中します。不安になりながら眠りについて、1時間くらいすると電話がかかってきます。
「○○さん下血してます!」
血圧が下がるようであれば緊急での内視鏡が必要になります。安定していれば朝まで様子見てから内視鏡かな、、、。
どちらにせよ出血していると聞くと不安でゆっくり眠ることはできません。
出血を繰り返すときに、もちろん一番つらいのは患者さんですが、僕ら医療者も不安で眠れない夜がずっと続きます。
ちょっと思い出したら辛くなってきたので一旦終わりにします。
まさかの次回へ持ち越し!