下血のはなし 総論
消化器内科をしていると、よく 「おしりから血が出た!」 と受診される方がいます。
いきなりおしりから血が出てきたらびっくりしますよね。
ただ人によって感じ方はそれぞれで、すぐに飛んでくる人もいれば、何回も出血を繰り返してやっと病院に来られる方もいます。
おしりから血が出ることを、「下血」「血便」と表現します。どちらもおしりから血液が出てくるのは一緒ですが、実は微妙に意味が違います。
「下血」は口から大腸までの消化管からの出血が、肛門からの排出されることの総称として用いられる場合もありますが、、狭義には食道・胃・十二指腸など上の方の出血が、おなかの中で黒く変化して出てくることを指します。
「血便」は大腸や肛門の下部消化管からの出血による赤色の便を指します。
出血があったときに考えられる病気ですが、非常にたくさんあります。ざっと思いつくだけでも
1,痔
2,腫瘍:ポリープ、大腸癌
3,腸炎:虚血、感染、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)
4,憩室出血
5,上部消化管出血:胃・十二指腸潰瘍、静脈瘤etc
などです。意外とたくさんあります。
出血があった場合、その色や量、痛みの有無などで病気の鑑別をしていきます。
まず「色」についてですが、
出血してから時間がたつにつれ、便に混ざる血液は赤色から黒色に変化します。
そのため、血がでているところが肛門に近いほど血液は赤く遠いほど黒くなります。
胃や十二指腸など肛門から遠いところからの出血ほど便の色は黒くなります。
続きまして「量」です。
ティッシュにつくくらいなのか、ぽたぽた垂れるくらいなのか。便器が赤く染まるくらいなのか。
便と一緒に血液がでてきているのか、血液だけ固まってでてきているのか。
新鮮血が少量ポタポタなら痔?みたいな
「痛み」についてですが、
虚血性腸炎であれば痛みの後下血する、憩室出血は痛みがない、など病気により特徴があります。
以上のように考えながら疾患を絞っていきます。
下血するとびっくりすると思いますが、下血は基本的に放っておくと自然にとまることが多いです。
しかし、中には出血がひどすぎて気を失ったり、大きな病気が隠れていることもあります。
血便・下血があった場合には、迷うことなくすぐにご相談ください。