下血のはなし 各論 大腸憩室出血 ②
前回の続きで大腸憩室出血の話です。
憩室出血は繰り返すことが多く、また夜になると出ることが多いという僕の主観の話でした。
聞くところによると、病院によっても対応は違うみたいす。
下血があれば何回でも内視鏡をするところもあれば、血圧が下がった時など状況をみながら内視鏡をするところもあります。
僕が専攻医で若いころは、血が出たらいつもなんどでも全例で内視鏡をしていました。
しかしそれがいいことなのかはわかりません。
前回お話ししたように、緊急で大腸内視鏡をしても、便と血で視界は悪く、また止まっていることがほとんどです。
夜中の場合は、当番の看護師さんを呼んで、自分が家からかけつけて、いざ内視鏡をはじめてみると血は止まっているということが多いです。
止血していることが確認できるだけでも意味はあるのかもしれません。
しかし、患者さんの苦労や、皆の労力を考えると、よっぽどでなければ夜中に内視鏡はしなくてもいいのではないか、と思います。
あともう一つ悩ましい点が、抗血栓薬(血液を固まりにくくする薬)を飲んでいる場合です。
やはりなにも薬を飲んでない人に比べると、血が止まりにくくなります。
そもそも抗血栓薬は、心臓や脳の血管に病気があり、必要があるから飲んでいるわけで。
憩室出血が止まらないからと薬をやめてしまうと、今度は脳梗塞になってしまったり、心臓がわるくなってしまったりすることが起こりえます。
かといってずっと血が止まらなければ、抗血栓薬をやめざるを得ない時もあります。
勤務医時代は、年に1回くらいどうしても止血を得られない憩室出血にあたることがありました。
最終的に血が止まらなければ手術で大腸を切除してもらうことになります。
一度出血がどうしても止まらなくて、S状結腸を憩室ごと切除してもらった次の日に上行結腸の憩室から出血した方がいました。
幸い上行結腸の出血は保存的によくなりましたが、止血が確認できるまでは気が気でなく、毎日はきそうでした。
このように憩室出血は良性疾患ですが非常に悩ましい病気です。
この憩室や出血に関しては、なにかすればよくなるわけではなく、何か起こった時にきちんと対応できるかだと思います。
一度カメラをして、自分に憩室があるか確認しておいてもいいかもしれません。
ご心配な方がおられたらいつでも相談ください