月経に関する諸症状
月経(または生理)は、約1か月に1回卵巣から卵子が排卵され、その後受精卵が着床しないと分厚くなった子宮内膜が剥がれ落ちて出血として体外に排出されることを言います。
出血や出血に伴う痛み以外にも、月経期、卵胞期(卵胞が育つ期間)、排卵期、黄体期(排卵して月経がはじまるまでの期間)でホルモンの分泌の量が変化することで様々な症状を引き起こすことがあります。
以下のような症状がある場合は婦人科を受診して相談してください。
月経困難症
月経痛
月経中に痛みがある。
月経に伴う痛みを感じることで、8割以上の女性がいつも通りの生活ができていないと報告されています。
また月経痛は子宮内膜症の前段階ともいわれており、注意が必要です。
市販の鎮痛剤の効果がなくなってきた、頻回に飲む必要がある方は受診をおすすめします。
過多月経
月経の量が多い。
1回の月経で20~140ml出血していると言われていますが、個人差が大きいです。
多い日はナプキンの交換が間に合わない、レバー状の塊がでる場合は月経の量が多いと考えられます。
子宮筋腫や、子宮腺筋症があったり、貧血になっている場合もあります。
月経量が多くて困っている、または健診で貧血を指摘された方は受診をおすすめします。
対症療法
過多月経・貧血 ➡ 鉄剤・止血剤
痛み ➡ 適切な鎮痛薬の使用:月経の痛みは我慢せず、痛みはじめたときに鎮痛剤を内服すると効果的です。
漢方薬:当帰芍薬散・芍薬甘草湯など
ホルモン療法
①プロゲスチン製剤:ジエノゲスト0.5mg
排卵抑制、内膜増殖抑制効果があり、不正出血の副作用はありますが血栓症のリスクがなくどの年齢層の方にも使用できるホルモン剤です。
②エストロゲン・プロゲスチン製剤(LEP)
1日1錠毎日服用することで、排卵を抑制します。
月経量が少なくなり、月経痛の緩和、月経枚症候群(PMS)にも効果的で、将来的な子宮内膜症の予防にもなります。
LEP製剤にはエストロゲンの含有量や黄体ホルモンの種類、内服の期間によっていろいろな製剤があり、どのお薬を用いるかは受診した際に相談してきめていきます。
③子宮内黄体ホルモン放出システム(ミレーナ52mg)
子宮内に黄体ホルモンを持続的に放出するシステムです。過多月経+月経困難症の治療薬として国内外のガイドラインですすめられています。現在では世界約130カ国で、延べ約3,900万人の女性が使用しています。ミレーナ52mgから放出される黄体ホルモン(レボノルゲストレル)は、子宮内膜の増殖を抑える働きがあるため、内膜は薄い状態となり、月経量を減少させるとともに月経痛を軽くします。
また、1回の挿入で5年間有効であるため管理が楽というメリットもあります。(ただし挿入後1,2,3,6か月後、以後1年毎の検診が必要です。)
99%以上の高い避妊効果もあり、今後数年間~ずっと妊娠を希望していない方に非常に良い適応です。
月経前症候群(PMS)
毎回、月経がはじまる1~2週間前に、体の不調(疲れやすい、眠たい)や気分の変調(イライラや気分の落ち込み)などがあります。月経がはじまると症状が治まることが特徴です。
勉強や仕事、家事に集中できず、スポーツでもいつものパフォーマンスが出せないこともあり、日常生活の質が著しく低下してしまいます。
対症療法
①生活習慣の改善(食事・休養)
②サプリメント(γ-トコ複合、Ca、VitBなどマルチビタミンミネラル)
③漢方薬 当帰芍薬散・加味逍遙散など
④PMDD(月経前気分障害)の場合:抗うつ剤・抗不安薬(心療内科)
ホルモン療法
①エストロゲン・プロゲスチン製剤(LEP)
②プロゲスチン製剤
(月経困難症を伴う場合)
月経不順
月経がはじまった日から次の月経がはじまった日までが、24日以内、または39日以上のものを言います。
性ホルモンは、視床下部・下垂体・卵巣から分泌され、それぞれが作用しあって周期的に分泌することで月経を起こしています。
月経が不順な方は何らかの原因でホルモン分泌がうまく機能していな場合があります。
問診、BMI、採血、超音波検査などを行い原因ごとに対策を考えていきます。
*妊娠の可能性がすこしでもある場合は、必ず妊娠検査を行ってください。
月経移動
受験や旅行、大切なイベントに月経が重なりそうな時、ホルモン剤の内服で月経の時期をずらすことができます。
初めて月経移動をする方は、1~2周期前(1~2か月前)の月経開始5日までに受診されることをお勧めします。
月経2~5日目に内服を開始すると月経移動の成功率は高くなります。
月経移動は自費診療になります。